βの悩み事
白須さんの作品から少し続きみたいな。


「もしもし?夜十神誣、聞いてますか?もしもし?」
機械的に繰り返す声は未だ幼さを残しており、電話を手にする手は少女にも届かない年齢であることを感じさせる。
自分の声を止めて、電話の音に聞き入れば、既に切れている事に気づく。
電話料金が惜しいとでもいうのか慌てて電話を切り、少女はぼんやりとダイヤルを眺めた。
先程の内容はそこまで衝撃的だっただろうか。
少女、荒神古式は感情というものが生来希薄であった。
自ら思考するのではなく、記憶によって得ている借り物の知識を繋ぎあわせて思考しているように見せる生き方をし続けた弊害でもある。
だがしかし、古式はその才能によって現在の地位を得ており、その事に疑問は覚えていない。
「夜十神誣、大丈夫ですかね」
助詞の欠落した奇妙な敬語でぼそぼそと語る。
心配しているというよりは、そう口にするのが一般的であるから、といった口調である。
人間性まで欠けつつあるのかと自嘲気味に笑うが、その顔も機械的であり、不気味さが残る。
足を進める度にがしゃんがしゃんと嫌な金属音が鳴り響く。
身体の半機械化によるそれは、ひっそりと動くには向かず、常に位置を知らせることになる。
「メンテナンス、必要です」
虚ろな目で語る少女は、取って付けたような笑顔だった。

続く
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