回路異常ナシ
室内をあとにした男に手渡した資料の複製を古式は静かに眺めていた。
気が散るからと追い払ったのだが、別にそんなことはない。
身体のほとんどが機械であるため、センサーの一部が生体反応を伝えてきて確かに鬱陶しいのだが、そういった煩雑な情報は脳からの命令でいくらでもシャットアウトできる。
現在もちらほらと生体反応を検知しているが、誤差の範囲であったり、近づいてきてもすぐに離れてしまったりとあまり重要な情報は舞い込んでこない。
そういった情報までも律儀に脳は記憶しているのだが、意識して引き出そうとしなければ表面に出てくることはない。
日常の感覚はほとんど隠しデータのようなものなのだ。
古式は冷めきった麦茶を飲む。
砂糖がこれでもかと言うほどに入れられ、溶けきっていない砂糖がざらざらとした質感をコップの底に与えている。
脳の運動に糖分は必要不可欠だが、いささか採りすぎのようでもある。
麦茶の一風変わった味を楽しみながら、古式は一息つく。
まだまだ日は長い。


続く
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