モラリズム
再編成されると聞いた日、とても悩んでいたような覚えがある。
今ではすっかり割りきっていることだが、その当時はどちらが正しいのか分からず悩むことも多かった。
特高警察は鮫島愁太郎の死後、一度解体され、大幅にその様態を変えることとなった。
四課所属の降矢木続は、多くの同僚が特高を後にするなか、最後までこの特高で働く事を選んだ。
続はその剣術の能力から、かつての所属とは異なった武装親衛隊に配属される事となった。
武装親衛隊にはかつての特高で見かけたことのある顔触れもいくつか見られたが、少しだけ皆表情が凶悪になった気もしなくはない。
続はそれまでしてきたように、上からの意見に逆らわずに生きている。
それが一番楽だからといった思考停止でしかない意見ではなく、続は元よりそういった性質の人間だった。
規則に従って生きる事こそが正義であり、それ以外はすべて悪なのだと切り捨てるべきである。
たとえその規則が間違っていたとしても、正す程の求心力も革命への情熱も自分には欠けていることは分かっていた。
もしそれまで信じていた規則が新しい規則によって変わるのであれば、新しい規則に従う。
降矢木続はそういった人間だった。
機械的に人を切り捨て踏みつける彼女に迷いはない。
長かった髪を少し切り、激しく動いても邪魔にならないようにした。
少ししか切れなかったのは昔の自分にまだ未練があるからなのか。
続は刀に絡み付く水滴を払い、元の鞘に納めた。
七月の初め頃、幼い頃の記憶にある七月は此処まで雨の降る季節ではなかった気がする。
大雨との宣言があった通り、横殴りの雨が降り注ぎ、ほとんど人は出歩いていない。
反荒神とはいえ、雨の降りしきる中活動するほどの活力は無いらしい。
はぁ、とため息をつき、続は職場に戻る事にした。

続く
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