ディスオーダー
低い唸りを立て、バイクのエンジンがかかる。
荒神日奈子は視界に絡みつくその薄緑色の髪をさらりと払い、前方に集中する。
後方部には漆黒の髪を結い上げた、剣士荒神聡子が乗り込む。
これが普通のバイクならば明らかに過積載だが、荒神のテクノロジーを駆使して改造を繰り返されたバイクは二人が乗り込もうとも問題なく動く。
周辺には瓦礫が散らばり、荒神に対する抗議を繰り返す人々の怒号が響いている。
狼煙のように高く高く上がった煙はゆらゆらと赤い光を浴びながら次第に大気と同化していく。
荒神の為に作られた魔物のようなバイクは一際大きな唸り声を上げ、真っ直ぐに走り出す。
バイクの前方には多くの反荒神勢力が、百鬼夜行のように声をあらげたり、大きく旗を掲げたりしている。
日奈子がアクセルをかけ、バイクは更に加速する。
規則正しい加速度でバイクは速度を上げていき、前方の人々は蜘蛛の子を散らすように走っていく。
しかし、バイクの速度には敵うことなく、派手に数人が弾き飛ばされる。
血が派手に跳び、真っ赤な装飾をバイクに施す。
「チッ、汚れたか」
日奈子が小さく舌打ちした瞬間、バイクは大きく方向転換し、その拍子に聡子が飛び上がり、着地と同時に抜刀する。
円を描くように周囲を囲む民衆を毅然と見つめ、剣士聡子はスラリと長い刀剣を目の前につき出す。
人々の視線を一点に集め、聡子はゆっくりと刀を横凪ぎに振るい、そして大きく踏み込み、円を形成していた一角を貫く。
刀による切り傷が派手に赤を撒き散らし、血の道を切り開く。
「雷蔵兄様の像はあっちだ!」
「わかった!」
わかった、の声を聞くと同時に聡子はバイクに再び跳び移り、日奈子はバイクを加速させる。
遠方に見える荒神雷蔵の銅像は案の定多くの人々に囲まれていた。
趣味が悪いとはいえ、荒神による支配の象徴のようなものであるこの像を壊されるのは良いことではない。
更に言えば、雷蔵の性格からしてこの像が壊れることで機嫌が悪くなることは間違いない。
聡子にとってそれは良いことではない。
二人の道を塞ぐかのように迫ってくる民衆を切り伏せたり、撥ね飛ばしたりし、二人は真っ直ぐに進んでいく。

終わり
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