衣裳と針
針が飛ぶ。
女の掴んだ針は最初は3本だったが、彼女はその針を投げる度に素早く左手の鞄から針を補充する。
相当な手練れらしく、針の再装填までの時間は非常に短い。
針自体の殺傷能力は普通。
拳銃よりも遅い為、なんとか避けられる。
しかし、次第に針の投射される場所が自分が逃げた場所を追尾しているように感じられる。
くすくすと嫌な笑い声をあげながら、年若い女は針を投げる。
針が目前に迫る。
こちらには防御の術が無い。
とっさに左腕で顔をかばうが、針は左腕に深く突き刺さった。
一瞬動揺するが持ち直し、拳銃を構える。
相手の服は幸い軽装、銃弾を防げるほどの装甲は持ち合わせていない。
女はそれに気付いたらしいが、逆にこちらに向かって歩いてくる。
しっかりと狙いすまして、引き金を引く。
ギンッ
嫌な音が響いた。
「残念でした。」
女の声が近くから聞こえる。
自分の胸元には針が突き刺さっている。
目前に居た女はいたって無傷。
「銃弾なんかじゃつまんないからだめ。私のこともっと愛して?」
ゆっくりと針が首筋に食い込んでいく。
つっと血が一筋流れた瞬間、深く針が入り込み、男は絶命した。

続く
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