空間的空論に対する俺的検証
「……あ?」
ガタンガタンと揺れる電車の中で十五は目を醒ました。
半覚醒の状態から素早く目を見開き、周囲を見渡す。
それまで多数の人が居た車内は閑散としており、誰も居ない。
耳が痛いほどの沈黙に頭が少しぼうっとする。
外を眺めると、少しだけ見覚えのある景色。
最近見たものではなく、これは5年近く眺め続けた景色であった。
「東京ー……東京ー……」
静かにアナウンスが響く。
時刻は深夜に程近い。
百千十五はゆっくりと駅のホームに足をおろした。
扉が閉まる。
ゆっくりと振り向くと、電車はすでに出た後だった。
既に深夜だと言うのにホームは人に溢れている。
ついに来たのだ。
見慣れた景色に向かって十五はぼんやりと呟く。
「ただいま、東京」
西京では常に奇妙なネットワークに接続されていた携帯電話が、元々あるべきネットワークにつながる。
メールボックスにはゴミばかり、人から直接送られたメールは無い。
ポケットの中身をあらためて見ると、西京と書かれた奇怪な切符が一枚。
携帯電話のデータを確認すれば、西京で撮った写真の多くがそのまま残っていた。
「さぁて、ちょっと楽しくなってきたっす。遊んでやろっと!」
すばやいフリック操作でアプリを起動した十五はにやにやと嫌味な笑いを浮かべていた。
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bkm
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