「人違いだよ」
嘘はそう呟き、相手の得物で応戦する。
そこそこに体力も体術もある。
先ほど棒を投げつけられたことには驚いたが、つまりそれは敵だということだろう。
嘘は使いなれない得物に戸惑いつつも、しっかりと棒を握りしめた。
よく見れば、先端に金属がついている。
これで威力を増大させているらしい。
攻撃を避け、すぐさま反撃に出る。
棒を握りしめた腕がしなり、棒は横凪ぎに振るわれる。
女はこれに気付き回避、しかし、すぐ後ろからもう一人の攻撃が飛んでくる。
楽だ。
嘘は見かけていなかった兄弟の登場に戸惑う。
しかし、これを好機と見て、さらに攻撃を仕掛けた。
楽が飛ばされるが、その隙に接近、横向きに棒を振るえば当たった感触がある。
ギンッ
激しい金属音が響き渡る。
女の服装を見れば、その腹部を強固な金属が守っていた。
すぐに新たな攻撃が飛んでくる。
嘘は棒で棒を防ぐが、衝動が腕まで伝わり少し呻く。
しばし膠着が続いた後、急に女が離れる。
楽が後ろから攻撃を仕掛けたらしい。
避けきれずに女はすこし顔をしかめる。
「ダメージ無しとはいかねぇか……チッ」
舌打ちをし、口許を拭い、女はさらに攻撃を仕掛ける。
今度は棒か?なんだ?
そういった疑問が脳内に浮かんだとたんに飛んで来たのは蹴りだ。
楽は避けきるが、嘘は避けきれずに吹き飛ぶ。
一瞬意識が飛びかけ、嘘は咳き込む。
女は靴を踏み鳴らす。
カツンカツン、という攻撃的な音が耳にうるさかった。
続く