涅槃寂静
「えへ、実はどうでもいいんですよぉ……それにそちらには利益ありませんしぃ……」
涅槃は軽く口を開く。
おかしくて仕方がない。
古式に至ってはいつもと同じ表情を浮かべている。
想定の範囲内だ。
ニコニコと笑う。
楽しくて仕方がない。
数人と人質が居る、この程度の状況なら多少の被害程度でどうとでもなる。
命はない?どうでもいい。
「……人質取ってるんだ、あっちもそう簡単には手出ししないだろ」
ぼそぼそと呟く声が聞こえる。
涅槃はけらけらと高く笑う。
普段はしない笑い方だが、意外と発音が容易い。
涅槃は少し前に出て、要求について尋ねる。
「一応決まり文句でしょうしぃ……聞いておきますねぇ……何が目的ですかぁ?」
他の一行はじっと視線を同じ位置に止め、動かない。
涅槃はおどけた調子で言い、またけらけらと笑った。
「そこの荷物、人質と交換しろ」
予想通りの要求に、涅槃はにい、と口角を上げる。
手首につけたブレスレットをいじりながら、さらに涅槃は続ける。
「……ところで、いいデータ取れてますぅ?」
傍若無人に適当な言葉を投げ掛ける。
返答はないが、古式は妙な色の目をぱちりと開いた。
風が少し強い。
はためく白衣を見ながら、涅槃は関係のないことに思いを馳せていた。

続く
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