無量大数
涅槃は笑っていた。
そのことは最初から全く変わらない。
構築された壁は強固なものだとわかる。
炭素と炭素が共有結合し、強く繋がっている。
ダイヤモンド、そう呼ばれる炭素だ。
くすくすといつも通りの笑いがこぼれる。
愉快で仕方がない。
やはり切り札は最後までとっておくべきだ。
涅槃は静かに手を壁に添える。
奇形と称される両手は左右が逆である。
にこりと笑う。
古式はこちらのデータを収集しようと眺めているらしい。
勿論安否の心配等ではなく、人間は何分ほどたてば空間の酸素を使い果たし死に至るかに対する興味だろう。
しかし、そのデータを収集させるつもりはない。
そんなものはどこかの使い捨ての犯罪者でも使うのが妥当だ。
空論の立証方程式、手のひらにあるのはその能力だ。
物質のあらゆる法則を無視して、存在自体を抹消する亜人としてかなり稀有な能力である。
最も、使用出来る回数がかなり低く、切り札としてしか使えないのだが。
「残念でした!」
そう言ったとたん、涅槃と同じ質量分、壁が消え去る。
まるで手品のようにはかなく、光る箱は打ち破られた。

続く
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