戦術的撤退
つらい。
楽は以前に受けた傷をかばいつつ攻撃を仕掛けた。
痛みがほとんど伝わらない体であるとはいっても、ダメージがたまれば人並みに痛い。
それに、攻撃を仕掛ける度に手に伝わってくる感触が痛い。
「くっそ!」
痛みに手首を押さえて女から離れる。
嘘はあまりダメージがないのか、割と平気そうに女と戦っている。
女は片方の武器を取られつつも、あまり不自由はない様子で、むしろ腕が軽くなって便利といった様子である。
二人がかりでも不利だ。
楽はそう判断し、隙を伺う。
なんとかして撒ききれないだろうか。
女を数メートル先に飛ばして走って、だめだ遅すぎて追い付かれる。
思考をまとめているうちに女と嘘の戦闘は拮抗していく。
楽は思いたち、電気棒を強く握る。
隙をつくならばあの瞬間だけだ。
女が大きく棒を振りかぶる。
嘘はそれに気付き、素早く回避。
その瞬間に、楽は電気棒を振りかぶり、投げつけた。
電気棒は直線の軌道を描き、女の頭にぶつかる。
軽い脳震盪をおこし、女の動きが一時停止する。
楽はその隙に嘘の近くまで走り寄る。
「逃げるぞ!!」
そういい放ち、楽は走り出す。
スリッパが強く床をたたき、鋭い音が響き渡る。
研究所内の廊下は騒々しかった。

続く
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