天命穿つ蒼色の板
透き通った板を眺める。
そこに反射する顔は好青年然とした穏やかな笑みであった。
透明だが幽かに青ざめたその板を青年は受信板だと言った。
特に何の変鉄もないびいどろ細工の板なのだが、そうして言われてみると何だか奇妙な力を持った板に見えてくるのだからプラシーボ効果といったものは侮れない。
その板以外にも青年は持ち歩いている鞄から乱雑にがらくたを取り出し、これはなんだ、あれはなんだと与えられている役割について説明してくる。
一つは小さな香炉のようなもので、これは照明であると、またある一つは古く軋みそうな椅子であり、これは送信機だとか訳のわからない説明をする。
それまでほとんど何もなかった室内には青年の持ち込んだがらくたで溢れだしており、少年は少し文句を言う。
「おや、先生これはまだ下準備ですよぉ」
明らかに年上なのだが青年は少年のことを先生と呼ぶ。
それが周囲に奇怪に映ることは多いのだがそれは二人にとっては普通であり、太陽が東から昇る程に常識的なことなのだ。
「少し多くないか?こんなに多いと逆に胡散臭いぞ、コロ助」
「あっ、そう見えちゃいますか。なら減らしちゃいましょう。どうせ元手はタダなんですし」
指示された通りにがらくたを荷台に詰め直す姿はなんとも滑稽な風を帯びている。
日差しはいまだに強い。
新興宗教、綾の経糸は信者数獲得の宣伝に向けて準備を進めている。
宣教担当の青年、転坂恭助は着物の裾を叩いて荷台に詰め込んだがらくたを見やった。
これはまたいずれ金を巻き上げる時にでも、そういった考えから裏口の倉庫に収納する。
上手く口車にのせられれば新たな信者の獲得も、そこから金を搾取することも容易い。
だがしかしまずは準備を入念にしなくてはならない。
まだまだ自分からすれば若い主人の至らない場所は全て補完しなくては。
日が傾き始める。
経典の調整をしなくては。
恭助はにこりと微笑んだ。

終わり
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