「それでは検証してみましょうか。似非占い」
詠智咲凪はいつも通りの冷静沈着とした面持ちで検証の開始を告げる。
室内は夕暮れ時の赤に染まり、異形との境界が薄れているように感じられる。
安く手に入れた白と黒のカードと、赤い画用紙に手書きで五十音が示されたもの。
それからコップ一杯の水、五円玉。
「なんだかコックリさん思い出すね!五十音表使うところとか!」
にこにこと語るのは黄泉坂御影である。
確かに似ている。
だがしかし、この似非占いはあらゆる面でコックリさんとは異なる部分が多々ある。
「で、最初は背の低い人からですっけ?」
一色茉莉が問いかけ、身長を見比べる。
「ええ、ですので最初は私です。最後は三綾さん、任せて宜しいですね?」
念を押すように咲凪が見上げる少女は雪三綾である。
四人のなかでも一番背が高い彼女は小さく頷いてから微笑む。
「では改めて、始めましょうか。皆さん、心の準備は宜しいですね?」
淡々と咲凪は告げるが、その声はどこか楽しそうである。
「あっ、そうだ。一人は喋っちゃダメなんだよね!あたし黙ってるよ!」
確認事項をもう一度切り出し、今度こそ四人はテーブルを囲む。
四人は五円玉に指を添え、一回頷いて顔を見合う。
「御外道さん御外道さん、どうぞおいで下さい。おいでになられましたら白へお進みください」
咲凪は落ち着いた声で儀式の開始を宣告する。
五秒程のタイムラグがあってから、五円玉はすっ、と白いカードの上に滑った。
「では、質問させてください。いいですね?」
確認をすると、五円玉はまたしても滑り、よろしい、の文字を示す。
四人はその光景に満足げにうなずき、銘々持ち寄った質問をぶつけていく。
今後の部活動のこと、身長のこと、病気のこと、さまざまな質問に御外道さんはてきぱきと答えていく。
ひとしきり質問が終わり、四人の間に緊張が走る。
三綾はゆっくりと台詞を脳内で反芻してから口を開く。
「御外道さん御外道さん湯浴みの用意ができました。お帰りください」
そういった直後、五円玉はコップの水に投下される。
ほっと一息ついてから、黒いカードで蓋をする。
そして、すっかり夕暮れの赤が紫に近づいていることを確認して、四人は少し慌てぎみに後始末を始める。
五円玉は御影が保管し、黒いカードは帰りがけに咲凪が埋めることとなった。
御影は帰る前に、コップの水を流し台に捨てた。
その時、背後から笑い声が聞こえたような気がした。
終わり。