アディクト
薬品が首筋から流れ込んでいく。
透明な液体が入り込んだ瞬間、血液が熱を持ち、どくりと心臓がより強い脈を打つ。
視界が狭まったような感覚の直後、視界の中心が急に鮮やかになり、暴力的な極彩色に目がくらむ。
視界の端が磨りガラス越しの風景のようにぼやけ、中央は虫眼鏡越しにみているかのようにくっきりと綺麗に見える。
突然視界に与えられた普段とは違う大量の情報に脳は混乱し、一瞬突き刺すような頭痛を感じた。
ふらりと頭が揺れ、数拍程ぼんやりとしてしまう。
薬によって研ぎ澄まされた嗅覚が、目の前に居る愛しい人の姿をより確固たる印象として与えてくれる。
バンダー・スナッチはその瞳を微かに細めた。
薬が切れる前に感じていた渇き、苦しみ、そして感覚が弱くなっていく恐怖、誰かにかき乱されるような嫌な感覚はついぞ消えた。
今は愛しい人にゆっくりと寄り添いたい気持ちもあったが、そのままでは役に立てない。
そっとその異形の片腕を持ち上げ、へたりこんだ状態からふらりと立ち上がる。
ちょうど日が射してくると逆光となり、バンダー・スナッチの姿はシルエットのようになる。
影と同じ姿になった彼女の瞳だけは狂信的に輝いており、夜の猫のように煌めいていた。


終わり
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