赤の十戒
特に何もなしに始まる。サイレント気味。


「へェ、こいつァ驚いたぜ……てめェ椿の傘下の人間じゃねぇか」
塚森懺悔は沸点の低い血が沸くのを感じ取っていた。
強風で翻る帽子がやや鬱陶しいが、視界は概ね良好。
手に握った棒を強く握りしめると、先端に付いた金属の影響で少々前に棒が傾く。
視界に捕捉するのは赤い髪の女。
露出度の高い衣装は無防備であり、最低限の防御力しか持っていないように見受けられる。
しかし、ゆらりと構えた姿勢には特に隙は無く、拮抗が暫し続く。
風がゆらりと生温く肌を撫でたその刹那、懺悔が安全靴で地面を蹴りあげて突撃する。
風の抵抗を受けて翻る修道女の衣装、それを大して面白くもなさげに見やり、女は防御体勢をとる。
碧色の瞳を細め、照準を合わせ、懺悔は得物を振るう。
風を切り、棒切れは直ちに凶器と化して降り下ろされる。
女は寸での所でこれを回避、長い赤髪が少し千切れてはらりと舞う。
間髪をいれずに走り込み、もう片方の棒で追撃を狙う。
その動きを予測していたかのように今度は蹴りで女も応戦する。
キン、と金属と金属がかち合ったような音が響き、懺悔は無重力の最中にあるかのように吹き飛ぶ。
くるりと空中で一回転し、足が地面に触れた途端、走り込んでくる女の姿が目に入る。
拳が向かってくる。
棒を目の前で構え、咄嗟に防御とする。
強力な圧を受けて木を削って作られたにしては丈夫な棒が軋む。
途中で力を抜き、相手の力を利用して敢えて押しきらせる。
バランスを崩しつつ、棒で押しきった相手を追うことも忘れない。
二人の赤い女は城砦の一角でぶつかり合った。

おわり
prev nextbkm
「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -