切り取り線と視界
二重の視界に映るのは鉄錆色の液体であった。
紙を張り付けた場所の視界に目をやると、何やら男が女の腹を捌いているように見える。
風が強いのか、紙がはためいて視界が悪い。
音は聞こえないが、何か男が口にしたように見えた。
相も変わらず視界は悪く、情報処理能力が疲れで落ちたのか、視界の彩度が少々低くなっていく。
机の上の書類にメモを取りながら、精神だけは男に向けたままにしていた。
ふと、メモを止めて視界に集中すると、すぐそばまで手が迫っていた。
ぐしゃり。
脳内に響いた音と共に、紙との感覚共有が終わる。
視界が途端に暗転し、それから耳に届いたのはやけにうるさい自分の悲鳴だった。

おわり
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