食卓用パレットナイフ
「ねえねえ早瀬くんーそれおいしいの?」
声をかけたのに特に深い理由は無く、少し気が会話に向いただけである。
今回は鉛筆画であり、乾燥時間に煩わされる心配はない。
ただ、似たような方法で画面を埋めていくのは飽きるのだ。
話しかけられた男は気だるげにこちらがわを振り返り、口の中の物を飲み込んだ。
「ん、おいしいよ。第一も食べる?」
何気なく尋ねる男の前には腹を捌かれた人体が横たわっている。
赤い血がだらりと垂れ、既に絶命していることは明確である。
明らかに異常な光景だが、その中に居る二人は非常に落ち着いており、これが当たり前であるかのように振る舞っていた。
「んーそうだなぁ、」
考えるそぶりを見せながら、鉛筆を床に置いた。
消しくずをはらって、キャンバスを綺麗にしてから、もう一度ゆっくりと口を開いた。
「早瀬くんが食べさせてくれたら食べなくもないよ、なんてね!」
ふざけた調子でそう言い、にこっと微笑んだ。
「ふーん」
相変わらず肉を食いながら、つまらなさげに返され、少し残念そうに顔を歪めた。
「なんだよーここから動くのめんどくさいんだから食べさせてくれたっていいじゃないかー」
不機嫌そうにぶつぶつと言うが、返答は特にかえってこない。
「ねえ、聞いてるー?」
相変わらず返事のない様子を不審がり、もう一度尋ねると、ゆっくりと此方に歩いてきた。
「第一、口開けて」
「ん」
指示通りに適当に口を開いた。
普通に口に肉を押し込まれるのかと思いきや、急に口に変わった感触があった。
妙に早瀬の顔が近く、咥内に違和感がある。
状況を掴むのに数秒を要し、混乱している中、更に口に異物が侵入してくる。
舌で肉片を押し込まれ、その妙な味に思わず押し返しかけるが、先程の自分の発言を思い出して飲み込んだ。
ようやく呼吸ができるようになり、短い息を吐く。
「どう?」
「……んん、まあまあかな……ちょっとボクの口には合わないや」
「そっか、残念」
未だに咥内に残る血が少し気持ちが悪かった。

おわれ
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